スマホゲームの3Dモデル抽出方法と注意するべき点

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スマホゲームの美麗な3Dモデルを、自分の手で動かしたり、じっくり鑑賞したりしたいと考えたことはありませんか。

この記事では、スマホゲームの3Dモデル抽出というテーマについて、技術的な側面から法的な注意点まで、深く掘り下げて解説します。

そもそも「3Dモデルの抽出とは何か」という基本的な問いから始まり、違法行為となりうる「3Dモデルリッピングとは何か」という重要な境界線について詳しく説明します。

特に、「ウマ娘」や「ブルアカ」といった絶大な人気を誇るゲームのデータに関心がある方も多いかもしれませんが、そのためには専用の3Dモデルリッピングソフトの知識が不可欠です。

本記事では、汎用性の高い「3D Ripper DX」の使い方、PCゲームプラットフォームであるSteam上のタイトルからの抽出、さらには「PSPの3Dモデル抽出」といった少し懐かしい事例まで、多角的に情報をお届けします。

この記事を読めば、あなたの知的好奇心を満たしつつ、重大なリスクを回避するための知識が身につくはずです。

記事のポイント
  • 3Dモデル抽出とリッピングの基本的な知識
  • モデル抽出に使用される代表的なツールとその使い方
  • データ抽出に伴う著作権上のリスクと注意点
  • 人気ゲームタイトルにおけるモデル抽出の現状


スマホゲームの3Dモデル抽出の基本と注意点

  • 3Dモデルの抽出とは何か
  • 違法行為にあたる3Dモデルのリッピングとは
  • 代表的な3Dモデルリッピングソフトを紹介
  • 汎用性の高い3D Ripper DX 使い方
  • Unity製ゲームのモデル抽出方法
  • 抽出したデータの著作権について


3Dモデルの抽出とは何か

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ゲームにおける3Dモデルの抽出とは、ゲームのプログラムを構成するデータの中から、キャラクター、背景、武器、アイテムといった立体的なオブジェクト(3Dモデル)に関する情報を外部のPCなどに取り出し、汎用的な3DCGソフトで扱えるファイル形式に変換する一連の作業を指します。

これは、ゲームの世界を構成するデジタルな「彫刻」を、展示ケースから取り出して手元で眺めるような行為に例えられます。

多くのゲームファンや、3DCGを学ぶクリエイターが、純粋な技術的探求心や作品への愛情から、このプロセスに強い関心を寄せています。

その目的は多岐にわたります。最も一般的なのは、お気に入りのキャラクターモデルをあらゆる角度からじっくりと鑑賞することでしょう。

ゲーム内では見ることのできない細かなディテールや作り込みを発見できるかもしれません。

また、抽出したモデルに自分でポーズをつけ、オリジナルの壁紙やスクリーンショットを作成する人もいます。

さらに高度な活用法として、Autodesk MayaやオープンソースのBlenderといったプロ向けの3DCGソフトウェアにモデルをインポートし、自作のアニメーションや映像作品を制作するための素材として利用するケースもあります。

これは、ゲームの世界観を借りて、新たな創作活動を行う試みと言えます。

技術的な観点から見ると、ゲームデータは開発元が独自に定めた特殊なファイル形式で圧縮・格納されています。

そのため、抽出作業にはまずゲームのデータ構造を解析し、モデルデータがどこに、どのような形式で保存されているかを探る必要があります。

そして、その独自形式のデータを、多くの3DCGソフトが対応している「.obj」や「.fbx」といった標準的な形式に変換するための、後述するような専門ツールが不可欠となります。

抽出の主な目的とその広がり

ゲームから3Dモデルを抽出する動機は、個人の興味の範囲に留まりません。

  • 個人的な鑑賞・創作: 好きなキャラクターのデザインを細部まで観察したり、ファンアートの参考にしたり、自作動画の素材として活用する。

  • 技術的な学習と研究: プロのクリエイターが作成したモデルのポリゴン構成やテクスチャマッピングの技術を学び、自身のスキルアップに繋げる。これは、いわばデジタル世界の「模写」にあたります。

  • MOD(Modification)制作: ゲームの内容を改造する「MOD文化」が盛んな海外コミュニティでは、キャラクターの外見を変更したり、新しいアイテムを追加したりするためにモデル抽出の技術が利用されることがあります。ただし、これも法的にはグレーな領域です。

違法行為にあたる3Dモデルのリッピングとは

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3Dモデルの抽出というテーマを扱う上で、絶対に避けて通れないのが「リッピング(Ripping)」という行為、そしてその法的な問題点です。

リッピングは、日本では俗に「ぶっこ抜き」とも呼ばれ、単なるデータ抽出とは一線を画します。

具体的には、ゲーム制作者の許可を得ずに、暗号化やコピーガードといった「技術的保護手段」を意図的に解除・回避してデータを不正に複製することを指し、これは多くの場合で著作権法に違反する違法行為に該当します。

その最大の理由は、ゲームに含まれるすべてのデータ(プログラムコード、キャラクターデザイン、3Dモデル、音楽、シナリオなど)が、著作権法によって保護された著作物であるためです。

ゲーム会社は、プレイヤーがゲームを正常にプレイする権利を許諾していますが、その内部データを自由に複製、改変、再配布する権利まで与えているわけではありません。

ほとんどのソフトウェアは、インストール時に同意を求められる利用規約(EULA)において、データの解析、改変、抽出といったリバースエンジニアリング行為を明確に禁止しています。

規約を破ってデータを抽出する行為は、まずこの契約違反にあたります。

さらに深刻なのが、著作権法との関係です。

文化庁の解説にもある通り、著作権法では、著作権者が設定したコピーガードなどの「技術的保護手段」を回避して複製を行うことを、たとえ個人的な利用目的であっても私的複製の例外から除外しています。

つまり、ゲームデータに何らかの保護がかけられている場合、それを解除した時点で私的利用とは認められなくなり、違法な複製と見なされる可能性が極めて高いのです。

リッピングに伴う深刻な法的リスク

ゲームデータの無断リッピングと、それによって得られたデータの利用は、著作権侵害として法的な責任を問われる可能性があります。

  • 民事上の責任: ゲーム会社から著作権侵害の差し止めや、生じた損害に対する賠償を請求される可能性があります。

  • 刑事上の責任: 悪質なケース、例えば抽出したデータを販売したり、大規模に配布したりした場合には、著作権法違反として刑事罰(懲役や罰金)の対象となる可能性があります。

「個人的に楽しむだけだから」「他の人もやっているから」といった安易な考えでリッピングに手を出すことは、決して許されません。

海外、特にアメリカのコミュニティでは「フェアユース(公正な利用)」という法理を根拠に、非営利目的のファン活動や研究目的であれば、ある程度許容されるという考え方が存在します。

しかし、これはあくまでアメリカの判例法に基づく考え方であり、日本の著作権法にフェアユースの包括的な規定は存在しません。

したがって、海外の事例を参考に「日本でも大丈夫だろう」と判断するのは非常に危険です。

代表的な3Dモデルリッピングソフトを紹介

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3Dモデルの抽出やリッピングには、特定の目的や対象ゲームに合わせて開発された、さまざまな専用ソフトウェアが利用されます。

ここでは、海外のフォーラムやコミュニティで頻繁に名前が挙がる代表的なツールをいくつか紹介します。

ただし、これらのツールの使用は、前述の通り極めて高い法的リスクを伴うことを重ねて強調しておきます。

あくまで技術的な知識として、どのようなものが存在するかを知るに留めてください。

ツールはそれぞれ、対象とするゲームエンジン(Unity, Unreal Engineなど)や、グラフィックスAPI(DirectX, OpenGL, Vulkanなど)のバージョンによって得意不得意があります。

そのため、一つのツールが全てのゲームに対応できるわけではなく、目的に応じて使い分けが試みられているのが実情です。

ソフトウェア名主な特徴と対象注意点
3D Ripper DX古くから存在する代表的なツール。DirectX 6, 8, 9, 11などで動作するゲームの描画プロセスに介入し、画面に表示されている3Dモデルを「キャプチャ」する形で抽出します。最新のゲームで採用されているDirectX 12やVulkanには非対応。
Ninja Ripper3D Ripper DXのコンセプトを発展させたツール。より多くのDirectXバージョンに対応し、3Dモデルだけでなくテクスチャの抽出機能も強化されています。設定が複雑で、GPUのレンダリングに関する知識がある程度上級者向け。
AssetStudioUnityエンジンで開発されたゲームに特化した抽出ツール。ゲームのデータファイル(アセットバンドル)を直接読み込み、モデル、音声、画像などを一覧表示して個別にエクスポートできます。Unity製以外のゲームには無力。アセットが暗号化されている場合は抽出できない。
RSX (旧Legion)主に人気バトルロイヤルゲーム「Apex Legends」のモデル抽出を目的として開発された専用ツール。特定のゲームに特化している分、高精度な抽出が可能です。対象ゲームのアップデートで頻繁に使用不能になるため、常に最新版を追う必要がある。

ここで紹介したツールは、その性質上、開発元が公式に配布しているわけではありません。

多くは非公式なフォーラムやGitHubなどのリポジトリで有志によって公開されています。

こうした非公式サイトからのソフトウェアのダウンロードは、ウイルスやマルウェアが仕込まれている危険性が常に伴います。

アンチウイルスソフトによるスキャンは必須ですが、それでもリスクを完全に排除することはできません。

安易なダウンロードはPCを危険に晒す行為であることを認識してください。

汎用性の高い3D Ripper DX 使い方

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ここでは、数あるリッピングソフトの中でも古くから知られ、基本的な仕組みを理解する上で参考になる「3D Ripper DX」の一般的な使い方について解説します。

このツールは、DirectX 9などで動作する比較的古い世代のPCゲームを主な対象としており、ゲーム画面に表示されている3Dシーンを、その瞬間のフレームごと丸ごとキャプチャするという特徴的な動作をします。

【警告】ここからの手順は、あくまでツールの技術的な仕組みを解説するためのものであり、ツールの使用を推奨、あるいは幇助するものでは一切ありません。著作権侵害のリスクを十分に理解してください。

基本的な使用手順

  1. 対象アプリケーションの指定: 3D Ripper DXを起動すると、まず対象となるゲームを指定する画面が表示されます。「Please select DirectX… application to profile」の欄にある「…」ボタンを押し、モデルを抽出したいゲームの実行ファイル(拡張子が.exeのファイル)を選択します。

  2. 出力関連の設定: 次に、抽出したデータを保存する場所や形式を設定します。「Output directory」でモデルデータ(.3dr)やテクスチャ(.dds)の保存先フォルダを指定します。

  3. キャプチャキーの割り当て: ゲームプレイ中に抽出を実行するためのキーを設定します。「Capture key」の項目で、任意のキーをホットキーとして割り当てます(デフォルトではF12キーなどが設定されています)。

  4. ゲームの起動(フック): 設定が完了したら、「Launch」ボタンを押します。これにより、3D Ripper DXがゲームのプロセスに「フック(Hook)」、つまり介入した状態でゲームが起動します。正常にフックが成功すると、ゲーム画面の隅に「Ready to capture」といった黄色いテキストが表示されます。

  5. シーンのキャプチャ実行: ゲームをプレイし、抽出したいキャラクターや背景が表示されているシーンで、先ほど設定したキャプチャキーを押します。成功すると、ゲームが一瞬フリーズし、その間に指定したフォルダへデータの書き出しが行われます。

  6. 専用形式ファイルのインポート: 保存先フォルダに「Frame_… .3dr」という独自形式のファイルが生成されています。このファイルを3ds MaxやBlenderといった3DCGソフトで開くには、それぞれに対応した専用のインポート用プラグインを別途導入する必要があります。

このように、3D Ripper DXはゲームをプレイしながらリアルタイムでデータを抜き出すため、目的のシーンを正確に、かつ最適な状態でキャプチャするには、ある程度の試行錯誤と慣れが求められる、職人的な側面も持つツールです。

Unity製ゲームのモデル抽出方法

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現在のスマートフォンゲーム市場やインディーPCゲーム市場において、最も広く採用されているゲームエンジンの一つがUnityです。

Unityで開発されたゲームの場合、より直接的かつ効率的に3Dモデルを抽出できる「AssetStudio」というツールがコミュニティで広く知られています。

このツールの最大の特徴は、3D Ripper DXのようにゲームを起動してグラフィック描画に介入する(リアルタイムキャプチャ)方式とは根本的に異なる点です。

AssetStudioは、ゲームのインストールフォルダ内に存在するデータファイル群(アセットファイルやアセットバンドルと呼ばれる)を直接読み込み、その内容を解析します。

これにより、ゲーム内で使用されている3Dモデル、テクスチャ、スプライト、音声、アニメーションといったあらゆるリソースを、あたかもファイルエクスプローラのように一覧表示し、必要なものだけを選択してPCにエクスポートすることが可能です。

AssetStudioの基本的な利用手順

AssetStudioの操作は非常に直感的で、プログラミングの知識などを必要としません。

  1. データフォルダの読み込み: AssetStudioを起動後、「File」メニューから「Load folder」を選択します。そして、対象となるゲームのデータが格納されているフォルダ(通常はゲームのインストールフォルダ直下にある「GAMENAME_Data」といった名前のフォルダ)を指定します。

  2. アセットの自動解析: フォルダを指定すると、ツールが内部のアセットファイルを自動的にスキャンし、解析を開始します。大規模なゲームの場合、このプロセスには数分かかることがあります。

  3. アセットリストからの選択: 解析が完了すると、「Asset List」タブに、ゲームに含まれる全リソースがファイル名、種類(Type)、サイズなどと共に一覧表示されます。3Dモデルは「Mesh」、テクスチャは「Texture2D」、音声は「AudioClip」といったタイプで分類されているため、「Filter Type」メニューから目的の種類に絞り込んで探すことができます。

  4. 選択したアセットのエクスポート: 抽出したいアセットをリストから選択(複数選択可)し、右クリックメニューから「Export selected assets」を実行します。保存先フォルダを指定すると、データが汎用的な形式(モデルは.fbx、テクスチャは.pngなど)に変換されて出力されます。

この手法は、ゲームを起動する必要がなく、オフラインで作業できるため非常に効率的です。

しかし、言うまでもなく、この行為もゲームの利用規約で禁止されているデータ解析にあたり、著作権侵害のリスクを伴うことに変わりはありません。

抽出したデータの著作権について

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ここまでモデル抽出の技術的な側面に光を当ててきましたが、どのような手法を用いるにせよ、最終的に最も重要かつ乗り越えられない壁となるのが著作権の問題です。

抽出した3Dモデル、テクスチャ、音声といった全てのデジタルデータの著作権は、例外なく元となるゲームを開発・販売した会社に帰属します。

したがって、それらのデータを権利者の許可なく複製し、利用する行為は、深刻な著作権侵害を引き起こす可能性があります。

日本の著作権法第30条では「私的利用のための複製」が認められていますが、これは非常に限定的な状況でのみ適用される例外規定です。

例えば、自身で正規に購入した音楽CDを、個人で楽しむ目的でPCやスマートフォンに取り込むといったケースがこれにあたります。

しかし、ゲームモデルの抽出においては、前述の通り、多くの場合で暗号化やコピーガードといった「技術的保護手段」を回避するプロセスが含まれます。

著作権法では、この技術的保護手段を回避して行う複製は「私的利用」の範囲には収まらないと明確に定められているため、抽出行為そのものが違法と判断されるのが一般的です。

そして、抽出したデータの利用方法によっては、さらに罪が重なる可能性があります。

言うまでもなく、抽出したモデルデータをインターネット上で第三者に配布したり、自身のウェブサイトで公開したり、ましてや販売したりする行為は、著作権(公衆送信権、譲渡権など)の完全な侵害であり、断じて許されることではありません。

また、ファン活動として人気の高いMMD(MikuMikuDance)などで利用するためにモデルデータを改変し、そのデータやモデルが踊る動画を動画共有サイトに投稿する行為も、権利者の許可なく著作物を改変する「翻案権」や、それを公開する「公衆送信権」の侵害にあたる違法行為となります。

二次創作と著作権侵害の明確な境界線

ファン活動として行われる二次創作(ファンアート、同人誌など)と、データの無断リッピングには明確な違いがあります。

二次創作は、元の作品から得たインスピレーションを元に、ファンが自身の技術と労力でゼロから新たな創作物を生み出す行為です。

これに対し、リッピングは他人が制作した著作物を無断で直接コピーして流用する行為であり、「創作」とは認められません。

「みんなやっているから大丈夫」という同調圧力や誤った認識は、法的な責任を問われる場面では何の言い訳にもなりません。

権利者が問題を認識し、法的措置に踏み切った場合、その全責任を負うのはデータを公開・利用した本人です。

具体的なスマホゲームの3Dモデル抽出事例

  • PSPの3Dモデル抽出は現在でも可能か
  • PC版ではSteamのゲームが対象になる
  • 人気ゲーム「ウマ娘」からの抽出
  • 「ブルアカ」の3Dモデル抽出について
  • まとめ:スマホゲームの3Dモデル抽の要点


PSPの3Dモデル抽出は現在でも可能か

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PlayStation Portable(PSP)に代表されるような、一世代前の携帯ゲーム機には今なお根強いファンがおり、その3Dモデルを現在のPC環境で扱いたいと考える人も少なくありません。

結論から述べると、技術的には現在でも可能です。

ただし、その手法はPSPの実機を直接操作するのではなく、PC上でPSPのゲームを仮想的に動作させるエミュレータ(その中でも特に「PPSSPP」が有名)を利用するのが一般的です。

高機能なエミュレータには、ゲームのグラフィックス描画に関する詳細な情報を解析するためのデバッグ機能が搭載されています。

これを利用すると、エミュレータがゲームの3Dモデルを画面に描画する(レンダリングする)瞬間のジオメトリデータ(頂点座標やポリゴンの接続情報)をキャプチャし、PC上にファイルとして保存することができます。

この手法は、3D Ripper DXがPCゲームのDirectX描画命令に介入(フック)するのと非常によく似た原理に基づいています。

しかし、この懐かしいゲームを楽しむための一見無害そうな行為にも、複数の法的な問題点が潜んでいます。

PSPモデル抽出に伴う二重の法的リスク

  • ROMデータの適法性: エミュレータでゲームをプレイするためには、UMD(PSPのゲームディスク)からゲームデータを吸い出した「ROMイメージ」と呼ばれるファイルが必要です。自身が正規に所有するソフトウェアから、個人的なバックアップ目的でROMを吸い出す行為自体は、法的にはグレーゾーンとされています。しかし、インターネット上からROMデータをダウンロードする行為は、正規に購入したソフトであっても明確な著作権侵害(違法ダウンロード)となります。

  • モデル抽出の著作権侵害: たとえ適法に入手したROMデータを用いたとしても、そこから3Dモデルデータを抽出する行為は、ゲーム会社の著作権(複製権、翻案権など)を侵害するという根本的な問題は変わりません。

このように、対象となるゲームが古いものであっても、その著作権が消滅したり、保護が弱まったりするわけでは決してありません。

思い出のゲームであっても、そのデータ抽出には最新の注意と法的な理解が求められます。

PC版ではSteamのゲームが対象になる

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PCゲームの販売プラットフォームとして世界最大のシェアを誇るSteamで配信されているタイトルは、その性質上、3Dモデル抽出の主なターゲットとなりやすい環境にあると言えます。

その理由は、家庭用ゲーム機とは異なる、PCというオープンプラットフォームならではの特性にあります。

多くのPCゲームは、MicrosoftのDirectXやオープンスタンダードなOpenGL、Vulkanといった標準的なグラフィックスAPI、そしてUnityやUnreal Engineといった汎用的なゲームエンジンを使用して開発されています。

この標準化された開発環境こそが、これまで紹介してきた3D Ripper DXやAssetStudioといった汎用ツールが効果を発揮しやすい土壌となっているのです。

また、ゲームの全データが暗号化されたディスク内ではなく、ユーザーのPCストレージ内に直接インストールされているため、データファイルへのアクセスも比較的容易です。

ただし、もちろんすべてのSteamゲームから簡単にモデルを抽出できるわけではありません。

特に、大規模なマルチプレイヤーオンラインゲームや世界的な人気を誇るタイトルには、Easy Anti-CheatやBattlEyeといった強力なアンチチートプログラムや、Denuvoのような独自のデータ暗号化技術(DRM)が導入されています。

これらの保護技術は、チート行為を防ぐと同時に、リッピングツールによるメモリの監視やプロセスの改変といったデータ解析行為をも防ぐ強固な壁として機能します。

これらの保護を無理に突破しようと試みる行為は、単なる著作権侵害に留まらず、より悪質な不正アクセス行為と見なされる可能性があり、極めて危険です。

一方で、Steamには「ワークショップ」という、ユーザーが制作したMOD(ゲームの改造データ)を公式に共有・配布できる素晴らしい機能があります。

ワークショップに対応しているゲームであれば、公式ツールや他のユーザーが作成した高品質な3Dモデルが、完全に合法的な形で配布されていることも少なくありません。

データを活用したい場合は、まずこうした正規の手段が用意されていないかを確認することが、賢明で安全なアプローチです。

人気ゲーム「ウマ娘」からの抽出

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社会現象ともなった大人気ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」は、その非常に高品質で魅力的なキャラクターモデルから、多くのファンが「この3Dモデルを手元でじっくり見てみたい」「MMDで踊らせてみたい」といった願望を抱いています。

実際に、海外のフォーラムや動画サイトでは、ウマ娘のモデルを抽出したとされる画像や、それを利用して作成された動画が散見されます。

技術的な背景として、「ウマ娘」はUnityエンジンで開発されていることが知られています。

そのため、原理的にはAssetStudioのようなUnity特化型ツールを用いることで、ゲームのデータファイルから3Dモデル、モーションデータ、テクスチャなどをリッピングすることが可能とされています。

しかし、この行為は技術的な可能性とは全く別の次元で、提供元である株式会社Cygamesの利用規約に明確に違反する不正行為であり、ファンとして、そして一人のユーザーとして断じて許されるものではありません。

Cygamesのコンテンツガイドラインという明確なルール

ウマ娘の提供元であるCygamesは、ファンによる二次創作活動を健全に楽しんでもらうため、公式サイト上で明確なコンテンツガイドラインを公開しています。

このガイドラインでは、ファンアートの制作など、ファンの皆様の創作活動を応援する姿勢を示す一方で、以下のような行為を固く禁じています。

「本コンテンツのイメージを著しく損なう内容、公序良俗に反する内容、他者の権利を侵害する内容、またはCygamesが不適切と判断する内容の創作活動は行わないでください。

また、ゲーム内から抜き出した音声、映像、モデルデータなどの素材をそのまま、あるいは加工して二次利用する行為もご遠慮ください。」(一部抜粋・強調)

このように、公式がはっきりと「ゲーム内から抜き出したモデルデータの二次利用」を禁止しています。

規約に違反した場合、ゲームアカウントの永久停止措置はもちろんのこと、特に悪質なケースでは損害賠償請求などの法的措置を取られる可能性もゼロではありません。

キャラクターや作品への真の愛情があるならば、その未来を守るためにも、開発者への敬意を払い、定められたルールの中でコンテンツを楽しむことがファンとしての正しい姿勢です。

「ブルアカ」の3Dモデル抽出について

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「ブルーアーカイブ -Blue Archive-」(通称:ブルアカ)もまた、その個性的で洗練されたデザインのキャラクターたちが織りなす独特の世界観で、多くのファンを魅了している人気ゲームです。

ブルアカでは、戦闘シーンなどで愛らしく動き回るデフォルメされた3Dモデル(SDキャラ)が特徴的で、これらのモデルデータに技術的な関心が集まっています。

ブルアカもまた、開発のベースとしてUnityエンジンが採用されています。

そのため、技術的な観点からは「ウマ娘」と同様に、AssetStudioなどのツールを使ってゲームのデータファイルにアクセスし、3Dモデルやテクスチャを抽出することが試みられています。

また、キャラクターのプロフィール画面などで表示される、滑らかに動く立ち絵(Live2Dモデル)のデータ抽出についても同様です。

しかし、これも当然ながら、提供元であるYostarや開発元であるNEXON Gamesの利用規約に明確に反する不正行為です。

ゲームを構成するキャラクター、イラスト、モデル、シナリオといったすべてのデータは、権利者が多大なコストと時間をかけて制作した貴重な著作物です。

これを無断で複製・配布・改変する行為は、クリエイターの努力を踏みにじるだけでなく、著作権法に抵触する可能性があります。

非公式なコミュニティでは、抽出されたモデルを元にMMD(MikuMikuDance)用のモデルデータが作成され、配布されているケースも見受けられます。

しかし、これらはすべて違法に複製されたデータを元に作られたものであり、こうしたデータをダウンロードしたり、使用して動画を作成・公開したりする行為も、結果的に不正行為に加担し、著作権侵害を助長することに繋がります。

公式が認める二次創作とデータ流用の違い

ブルアカ運営も、ファンによる二次創作活動(ファンアートや同人誌など)については、ガイドラインを設けて一定の範囲内で容認しています。

しかし、その大前提は「ファン自身の独創性に基づき、ゼロから新たに創作されたものであること」です。

ゲーム内のデータを直接抜き出して流用する行為は、この二次創作の範疇には全く含まれません。

それは「創作」ではなく、単なる「無断複製・改変」であることを明確に理解する必要があります。

まとめ:スマホゲームの3Dモデル抽の要点

この記事を通じて解説してきた「スマホゲームの3Dモデル抽出」に関する技術、リスク、そして倫理についての重要なポイントを、最後に改めて箇条書きでまとめます。

技術的な探求心は尊重されるべきですが、それ以上に法的なリスクとクリエイターへの敬意を正しく理解し、責任ある行動をとることが何よりも重要です。

  • 3Dモデルの抽出とはゲームのデータファイルから3Dオブジェクトを取り出す技術的な行為
  • 日本では権利者の許可なくデータを抽出する行為、通称リッピング(ぶっこ抜き)は多くの場合で違法
  • ゲームデータは著作権法で保護された著作物であり、利用規約でデータの解析や抽出は原則として禁止されている
  • 暗号化などの「技術的保護手段」を回避しての複製は、私的利用の範囲外となり著作権法違反にあたる
  • 代表的なリッピングソフトとして、DirectXゲーム向けの「3D Ripper DX」や「Ninja Ripper」が存在する
  • これらのソフトはゲームの描画プロセスに介入し、表示されているシーンをリアルタイムでキャプチャする
  • 現在のスマホゲームで主流のUnityエンジン製ゲームには「AssetStudio」という専用ツールが使われることが多い
  • AssetStudioはゲームのアセットファイルを直接解析し、モデルやテクスチャを個別に出力できる
  • 抽出したデータをインターネット上で配布、公開、販売する行為は悪質な著作権侵害であり絶対にしてはならない
  • 抽出モデルをMMD用に改変して動画を公開する行為も、翻案権や公衆送信権の侵害にあたる違法行為
  • PSPのような古いゲーム機でもエミュレータを使えば抽出は技術的に可能だが、ROMの入手方法や抽出行為自体の違法性は変わらない
  • Steamで配信されるPCゲームは汎用ツールが適用しやすいが、多くはアンチチートプログラムやDRMで保護されている
  • 「ウマ娘」や「ブルアカ」といった人気タイトルからのモデル抽出は、公式ガイドラインで明確に禁止されている利用規約違反
  • 公式のデータを直接流用する行為は、ファンによる二次創作とは全く異なり、「創作」ではなく「無断複製」と見なされる
  • 安易なデータ抽出は、ゲームアカウントの停止、損害賠償請求、さらには刑事罰といった深刻な法的リスクを伴う

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